研究概要 |
動脈瘤壁の脆弱化に動脈硬化と関連する病原微生物が関与しうる可能性について検討した.脳動脈瘤壁および頸部頸動脈動脈硬化プラーク内のChlamydia pneumoniae等の病原微生物の有無について検討した.頸部頸動脈における動脈硬化標本からは高い確率でChlamydia pneumoniaeを検出したが,脳動脈瘤壁の動脈硬化巣からは病原微生物を検出するまでに至らなかった. 脳動脈瘤発生には誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)由来の一酸化窒素(NO)が関与する.脳動脈瘤壁の脆弱化にiNOSが関与しうるかを検討してみた.未破裂動脈瘤および破裂動脈瘤の70%ではiNDSの発現を認めることはできなかった.破裂動脈瘤の一部および頸動脈動脈硬化病変ではマクロファージにiNOSが発現していると考えられた.臨床例での破裂脳動脈瘤壁に一部ではあるがiNOSの発現も認められ,動脈瘤破裂にiNOS由来のNOが関与しうる可能性が明らかとなった. 脳動脈瘤と直接的関連のない症例についてMR血管造影を用い無症候性未破裂脳動脈瘤の頻度を検討した.30歳未満では未破裂動脈瘤は認めていないが,加齢に従い未破裂脳動脈瘤の頻度は増加する.80歳以上では約8%に未破裂動脈瘤を認めるようになる.加齢に従い新生動脈瘤が発生していると考えられる. 我々は新生動脈瘤が発生直後に破裂に至った症例を経験した.この新生破裂動脈瘤の手術所見では動脈瘤全体が脆弱化し,動脈などの周囲細織との癒着が著明であった.我々はこの新生動脈瘤の手術所見を参考にして破裂脳動脈瘤の手術中の病態を詳細に検討した.新生動脈瘤の手術所見とほぼ近似する病態を有する破裂動脈瘤は前交通動脈瘤,サイズの比較的小さいものに認められる傾向があり,全体の破裂動脈瘤の中で20-30%を占めているのではないかと考えられる.
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