研究概要 |
1)家兎80匹を用いた.処理群(n=40)では,マイクロ液体窒素プローブを用いて右前十字靭帯をin situで凍結・解凍処理して線維芽細胞を選択的に壊死させた.sham群(n=40)では右膝にsham手術を行った.左膝関節は正常コントロールとした.術後6,12週で各群とも20匹ずつ屠殺し,10匹を生体力学的試験へ,5匹を微細構造解析へ,5匹を超微細構造解析(電子顕微鏡)へ供した.断面積は正常平均5.6mm^2が処理後6および12週で8.8および9.0へと有意に増加した。引っ張り強度は75.9MPaが57.5および35.6へと有意に低下した.Modulusは463.6MPaが350.2および253.7へと有意に低下した.微細構造では経時的に周辺部から細胞が侵入するが,12週でも中心部は無細胞であった.超微構造においてコラゲンフィブリルは10〜330nmの範囲で170nmにピークを持つUnimodalな分布を示した。 2)41頭のWistar-kingラットを用いて凍結・解凍処理した膝蓋靭帯マトリクスの再構築過程におけるIII型コラゲンの産生に関する分子生物学的解析を行った。右膝蓋靭帯に同様の処理を行った。5頭は器官培養による評価に用い,凍結・解凍処理の細胞死滅効果を確認した。残りの36頭は0,3,6,12週で屠殺して,各9頭のうち4頭にはラット抗III型コラゲンモノクロナール抗体を用いたABC法による免疫組織学的評価を行い,5頭ではRNAを抽出して逆転写し,ラットIII型プロコラゲンとGAPDH(内部対照)のプライマーを用いてquantitative RT-PCRによる評価を行った。免疫組織学的解析では3週と6週においてIII型コラゲンは楕円形の核を持った細胞のまわりに発現がみられ,12週ではIII型コラゲンの発現は全体に広がっていた。一方、Sham群では,III型コラゲンいずれの時期においても発現が認められなかった。2重免疫蛍光法を用いて定量した「コラゲンIII型/I型比」は,凍結群がSham群より有意に大きかった(p<0.01).また凍結群の「III型/I型比」は経時的に有意の増大を示した(p<0.01).RT-PCR解析によるIII型プロコラゲンmRNAは,6と12週のいずれにおいてもFr群がSham群より有意に多かった(p<0.05).
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