研究概要 |
加温滅菌処理同種骨の骨再造形と人工股関節骨・インプラント境界面の生体反応機構の病態特性を明らかにするために、平成15年度は、加温処理細片化同種骨移植の再造形に関する基礎実験と臨床応用研究を継続して行った。 1)基礎実験:過去の臨床応用研究から加温滅菌同種移植骨の再造形にはメカニカルストレスの存在が不可欠なことが明らかになったため、メカニカルストレス下の骨芽細胞動態について検討した。105%のuniaxial stress負荷でヒト培養骨芽細胞は、負荷後3時間でCOX-2、MMP-1、MMP-3のmRNAが一過性に有意に上昇した。しかしながら、MMP-2,MMP-9,MMP-13,TIMP-1,TIMP-2のmRNAの定量的解析では有意な差異は認められなかった。メカニカルストレス下で骨芽細胞の同種骨再造形に関与するのはMMP-TIMP系では、MMP-1とMMP-3のみであることが示された。 2)臨床応用研究:加温滅菌処理同種骨の3回細片化処理後のリモデリングについて臼蓋側の変化を検討した。股臼骨欠損に対して、Kerboull十字プレートないしKTプレート併用した人工股関節再置換術のうち1年以上経過し、評価可能であった同種骨単独ないし併用50関節のX線学的基礎評価を行った。スクリュー破損の1例を除くと、ソケットの外方開角の変化は平均1.1°、水平移動距離変化は平均0.9mm、垂直移動距離変化は平均0.8mmと良好だった。Gillの分類評価では、definitely2関節、probably0関節、possibly5関節、no loose43関節だった。設置の適正設置範囲内ではno loose43例であり、股臼再建プレートによる適正なメカニカルストレス条件下では加温滅菌処理細片化同種骨を骨補填剤として用いると良好な骨再造形が得られた。大腿骨側と同様に加温滅菌処理細片化同種骨は股臼でも有用であった。
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