研究概要 |
p53-/-マウス由来骨芽細胞(MMC2)にHPV16E7を導入することでRb蛋白を不活化するというin vitro transformationの実験系において最終的に得られた形質転換細胞であるMMC2TCとその前駆細胞であるMMC2E7との間で発現が変化した二つの新規遺伝子のクローニングと変異解析を行った。 1.MMC2TCで発現が亢進していたDDM23はcDNA全長2,507bpで710アミノ酸をコードし、その構造よりrasシグナル伝達系のRal GDS familyに属するもので、他のグループによりRGL3として単離されたものと同一であった。ヒトオルソログを単離し、骨肉腫細胞及び切除組織での発現を解析すると、高い発現を示すものが存在した。しかし強制発現による形質転換能は認められず、その癌化における意義に関しては今後の解析を必要とする。 2.MMC2TCにおいて発現が低下した遺伝子として単離されたDDM36はcDNA全長6,220bp、1,252個のアミノ酸をコードする遺伝子で、IgG superfamilyに属する膜蛋白であり、他のグループより報告されたNopeと同一であった。マウス培養細胞では骨芽細胞株であるMC3T3-E1では発現が認められたが、線維芽細胞系のNIH3T3や3T3-L1では発現が認められなかった。やはりヒトオルソログを単離し、骨肉腫切除組織での変異解析を行ったが明らかな変異は検出できなかった。悪性骨軟部腫瘍での発現を定量的RT-PCRで解析したところ、骨肉腫では半数の症例で発現が低下しており、他の腫瘍では特に滑膜肉腫で著しく低下していた。蛍光標識蛋白で局在をみると細胞同士が接着している部分の細胞膜に存在しており、間葉系細胞の特定の系統への分化決定に関連した認識機構に関与しているのではないかと考えられ、現在検討中である。
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