研究概要 |
培養軟骨細胞のシグナル伝達機構を解明するために、関与するmediatorやreceptor,channelの同定を試みた。 体重1.2kg日本白色家兎の膝から関節軟骨を採取後、軟骨細胞を単離し、24穴dishにおいて単層培養した。培養開始後3日後に培養液を廃棄し、各well内をリンゲル液で洗浄の後、0.1mM UTP溶液を0.5mlずつ加えsampleとした。対照群ではリンゲル液0.5mlのみ加えた。37℃で5分間incubateした後、Luciferase-Luciferin(40mg/ml)をsample 1ml当たり20μlずつ加え、ルミノメーターで放出ATP量を測定した。UTPを加える前に、P2 receptor blocker(スラミン),Cl channel blocker (DIDS,Niflumic acid)を各々加え、ATP放出の抑制効果をみた。 結果:細胞1個当たりのATP放出量(x10^<-4>nM) リンゲル液のみ:5.0, リンゲル液+UTP:14.0, スラミンのみ:1.9, スラミン+UTP:2.0, DIDSのみ:5.0, DIDS+UTP:4.8, Niflumic acidのみ:3.3,Niflumic acid+UTP:4.3 ATP放出はUTPにより刺激され、P2 receptor blockerやCl channel blockerにより抑制された。さらに、培養軟骨細胞には自発性カルシウム振動や、機械刺激で発生するカルシウム波が観察された。生体の軟骨に日常かかる圧力はきわめて大きく、カルシウム波が頻繁に生じており、細胞間情報伝達としての役割をしていると推察できる。培養軟骨細胞にはP2U型プリン受容体が存在し、機械刺激により発生するカルシウム波のシグナル伝達に関与している。また、機械刺激により発生するATP分泌は、Clチャネルを使って行っているという、重大な可能性を暗示している。細胞内カルシウムの増大は筋収縮、伝達物質の分泌、細胞増殖、アポトーシス等重要な細胞機能にかかわっているが、この場合にはP2受容体を介した侵害刺激の癒しに関係していると考えている。以上の成果は近日中に学会で発表し、論文にまとめることになっている。
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