研究概要 |
NAALADaseを介した侵害刺激伝達のメカニズムの検討を行った。NAALADase活性を抑制することによりNAAGが蓄積し、またシナプス外でのglutamateの産生が抑制されることが知られている。NAAGは、抑制他の作用を有するmGluR3の作動薬であり、かつNMDA受容体のagonist/antagonistとして働く。 NAALADaseの抑制薬として2-PMPAを用いて検討を始めた。2-PMPAを髄腔内へ投与するとNMDA受容体に依存した疼痛であるフォルマリンモデル及びカラゲニンモデルで鎮痛効果を示すがNMDA受容体に依存しない疼痛である熱傷モデルと術後痛モデルでは効果を示さなかった。しかしながら、2-PMPAはmGluR3に対して拮抗作用があることが報告され、NAALADase抑制の効果の一部しか検討できていなかった可能性が考えられた。そこで、米国Georgetown大学Neale教授との共同研究で、NAALADaseの抑制薬でかつmGLuR3に対して何ら効果のない化合物であるZJ11とZJ17を用いて検討を再度開始した。その結果、ZJ11及びZJ17を髄腔内投与すると2-PMPAと同様にフォルマリンモデルで鎮痛効果を示し、なおかつ脊髄後角第I-II層でFos蛋白の発現を抑制することを見いだした。 次に、神経因性疼痛モデルである部分結紮モデルに対して2-PMPA,ZJ11,ZJ17を投与して検討をした。このモデルは、NMDA受容体非依存性の疼痛であることを報告している。結果、2-PMPAを髄腔内投与してもアロディニアは抑制できなかったが、ZJ11及びZJ17はアロディニアを投与量依存性に抑制することを見いだした。従って、NAALADaseを抑制することによりmGluR3を活性化し、その結果として神経因性疼痛を抑制する可能性が示唆された。
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