肺高血圧モデルとして慢性低酸素(1/2気圧、吸入気酸素濃度10%)暴露ラットを用いた。肺内および肺外より肺動脈を摘出し、張力変化と同時に細胞内カルシウム濃度の変化を測定した。一酸化窒素は細胞内のグアニル酸シクラーゼを活性化し細胞内サイクリックGMPを増加させる。肺高血圧血管と正常血管では、血管平滑筋側のNOに対する弛緩反応が肺高血圧で抑制されている。内皮よりNO産生を促すアセチルコリンの反応も肺高血圧で低下している。一方、NOと同様細胞内サイクリックGMPを増加させる心房利尿ペプチド(ANP)による弛緩反応は肺高血圧血管でむしろ亢進した。8ブロモサイクリックGMPによる弛緩は、肺高血圧血管、正常血管で差がなかったので、収縮蛋白自体の弛緩能力は肺高血圧と正常血管で差がない可能性がある。サイクリックGMP依存性のプロテインキナーゼにより、細胞内カルシウム濃度の調節がおこなわれている可能性があるので今後の検討課題である。肺高血圧血管では、細胞内サイクリックGMPを上昇までの過程に異常があり、細胞内可溶性グアニル酸シクラーゼや、ANP受容体の変化が推定されるが、受容体の数、密度、受容体に結合するGタンパク、Gタンパクに連動するグアニル酸シクラーゼが今後の検討課題である。外部からNO吸入を行った時の内因性NO産生能やグアニル酸シクラーゼの変化は未解明である。
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