研究概要 |
平成15年度は,悪性高熱症関連疾患患者およびその血縁者27名のCICR(Ca-induced Ca release)速度の測定を行った.27名中2名は近隣の病院で筋生検を行ったが,25名は宅急便を利用して,生検された骨格筋標本を輸送した.患者の内訳は,悪性高熱症の既往歴10名,悪性高熱症家族歴8名,術後悪性高熱症4名.横紋筋融解症2名,筋疾患1名,その他2名であった. CICR速度の亢進が認められたものは10名(悪性高熱症の既往歴8名,その家族歴2名)で,17名では亢進は認められなかった.このうちから骨格筋の培養に成功したものは15であった.このうちの6名の骨格筋培養細胞でカフェインとハロセンによる細胞内のカルシウム動態について検討した.6名中2名でCICR速度の亢進が認められ悪性高熱症の素因があった.この2名ではCICR速度の亢進が認められなかった4名に比べ,カフェインがより低濃度で骨格筋細胞内のカルシウム濃度を示唆するratio340/380の上昇が観察された.この結果は昨年度までに認められた結果をさらに裏付けるものであった.一方ハロセンに対する反応では,CICR速度の亢進が認められた2名中1例では,CICR速度非亢進に比べ,同様に低濃度で細胞内のカルシウム濃度(ratio340/380)の上昇があったが,もう一例ではCICR非亢進症例と同等であった.検討できた例数が少ないため,はつきりした結論はいえないが,骨格筋小胞体のカルシウム放出チャンネル(リアノジン受容体:RYR1)の機能については、その遺伝子の変異部位が多数報告されていることから,部位によって機能異常の程度が異なる可能性があると考えられた.従って,今後は悪性高熱症の原因遺伝子であるRYR1の変異部位とカルシウチャンネルの機能異常についての関連性の検討が必要である. 遺伝子解析については,RYR1は106のエクソンにコードされた約5000のアミノ酸からなる大きなたんぱく質であり,悪性高熱症に関与するRYR1遺伝子の変異部位は40箇所以上報告されているため,これらをすべて検索することは,当施設で行っていた方法では時間と費用がかかり困難で,変異部位は検出できなかった.
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