研究概要 |
これまでに内視鏡にて下部尿路通過障害が否定された14例の男児原発性VURに対し、ウロダイナミクスおよび腎シンチグラフィーによる評価を行ってきた。ウロダイナミクス施行年齢は生後4ヶ月から10歳まで、平均4.2歳であった。VURの内訳は、両側性8例、片側性6例、VURの重症度はgrade III以下の軽度〜中等度VURが8例、grade IV以上の高度例が6例であった。排尿が自立する年齢を考慮し、3歳未満(7例)と3歳以上(7例)の2群に分けて排尿圧を比較すると、平均排尿圧は前者では82cmH2O、後者では57cmH2Oと3歳未満の群で排尿圧が高いことが判明した。排尿圧が90cmH2O以上、70〜90cmH2O、70cmH2O未満をそれぞれHigh,Equivocal,Lowと定義すると、3歳未満群ではHigh 57%,Low 43%であるのに対し、3歳以上群ではHigh 14%,Equivocal 14%,Low 72%であり、3歳未満群では高排尿圧例が多かった。また蓄尿中に排尿筋が収縮する不安定膀胱の合併頻度は、3歳未満群では0%、3歳以上群では57%であり、両群間に相違を認めた。排尿圧とVURの重症度、排尿圧と腎瘢痕陽性率には有意な相関は認められなかった。以上の結果から、男児原発性VURの特徴として、乳児例では高排尿圧が、年長児例では不安定膀胱の存在がVURの発生に深く関与することが示唆された。高排尿圧、不安定膀胱はそれぞれ排尿期、蓄尿期にみられるという相違はあるものの、膀胱内の高圧環境という点では共通しており、このような膀胱の高圧環境が原発性VURの発生・増悪因子として極めて重要であることが示された。
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