研究概要 |
平成12年度の研究として、ヌードマウス同所移植腫瘍に対するin vivoでの増殖抑制効果を検討した。[方法]ヒト膀胱癌細胞株(UMUC-2,KU-7)を、我々が開発した同所移植法によりヌードマウス膀胱内に移植し、腫瘍を形成する。その後、経尿道的にアデノウイルスベクターに治療遺伝子Ras抑制変異体N116Yを組み込んだ(Ad-CMV-N116Y),治療遺伝子としてゲルゾリン遺伝子を組み込んだ(Ad-CMV-GSN)を3日間連続的に投与し、14日めに屠殺。膀胱を摘出し、膀胱内の腫瘍形成をコントロールベクターAd-CMV-LacZ投与例と比較した。[結果]Ad-CMV-N116Yを投与した群ではコントロールにくらべ、有意な腫瘍増殖抑制が起こり、腫瘍数の減少、腫瘍体積の減少をみとめた。一方、Ad-CMV-GSN群もコントロールとくらべ、有意な腫瘍増殖の抑制を認め、これらアデノウイルスベクターによる経尿道的投与が治療的に意義のあることであることが確認された。なお、コントロール群を含めアデノウイルス投与群では、膀胱内の正常膀胱粘膜には軽度の炎症細胞の浸潤のみみとめ、また、肝臓・腎臓等の正常臓器にアデノウイルスベクターが播種していないことが確認された。[結語]これら治療遺伝子のアデノウイルスベクターによる膀胱内注入が臨床的にも有用である可能性が示された。今後、正常膀胱上皮細胞株へこれらアデノウイルスを観戦させ、異常が出現しないかどうか、また、Cisplatin投与がこれらの効果を増強しえるかどうか検討する。
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