(1)ゲルゾリン遺伝子を用いた遺伝子を用いた遺伝子治療の作用増強効果 まず最初に、本検討の実施にあたり、膀胱癌におけるゲルゾリン発現の調節機構について検討した。その結果、膀胱癌ではゲルゾリン遺伝子の発現がそのpromotor lesionのメチル化ではなく、アセチル化により制御されていることを証明した。トリコスタチン投与によりヒストンがアセチル化され、ゲルゾリン蛋白質の膀胱癌細胞内での発現は亢進し、in vitroで増殖抑制が確認された。現在、この結果に基づき、ヌードマウスの膀胱癌同所移植モデルを用い、ゲルゾリン遺伝子を用いた遺伝子治療の効果増強がはかれるかどうか検討中であるが、prekiminaryなデータではあるが、相乗効果が図れるという感触を得ている。 (2)N116Y遺伝子を用いた遺伝子治療の効果増強 Cisplatinを用いることでN116Y遺伝子治療の効果増強についてin vitroで検討したが、in vitroではN116Y遺伝子自体が非常に殺細胞効果が強く解析できなかった。現在、ヌードマウス同所移植モデルを用い検討中である。一方、ヌードマウス膀胱へのアデノウイルスベクターの導入効率の改善のため、実際のモデルでのアデノウイルスの分布についても解析を加えた。その結果、アデノウイルスベクターはヒト膀胱癌細胞のnest周辺で強く導入されていたが、その効率上昇のためには、癌細胞移植早期にアデノウイルスベクターの膀胱内注入する必要があると考えられた。現在種々の薬剤により導入効率が改善されるかどうか検討中である。
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