研究概要 |
p19^<ARF>(ヒトではp14^<ARF>なので以下p14^<ARF>)はp53分子分解に促進的に働くMDM2に結合し,その機能を阻害する.その結果,p53遺伝子が正常である場合にもp14^<ARF>遺伝子に異常があればMDM2によりp53が分解されその機能が発現できないことになる.本研究では前年度にの結果に基づき,腎細胞癌臨床検体での遺伝子異常の有無と臨床的諸因子の関係の解析,および,腎細胞癌細胞株でのp14^<ARF>の機能解析について,検討を行い,以下の知見を得た. 1.腎細胞癌手術切除検体での免疫組織学的検討. 3種類の,抗p14^<ARF>抗体を用いた検討で,腎細胞癌にはp14^<ARF>の発現は見られなかった. 2.腎細胞癌手術切除検体より抽出したDNAによる検討. 定量的PCRにより34例中8例にhomozygous deletionとおもわれる発現低下を認めた.さらに,homozygous deletionを認めた症例では,病理組織学的に高悪性度であり,臨床的にも予後不良であった. 3.腎細胞癌細胞株p14^<ARF>発現ベクターのp14^<ARF>発現のrestoration 発現ベクターpBabepuroにp14^<ARF>をサブクローニングしたものをp14^<ARF>欠失細胞株に同遺伝子を導入した.この結果,いずれの細胞株においてもp14^<ARF>のstable transfectantはえられず,Caki-1にのみ,p14^<ARF>のmRNA陽性細胞クローンがえられた.しかし,免疫組織染色,イムノブロットによる検討では,蛋白レベルでの発現はみられなかった. 以上のことより,p53の遺伝子異常が認められない腎細胞癌においてはp14^<ARF>の遺伝子,あるいは転写以降の遺伝子制御の異常が癌細胞の一層の生物学的悪性度獲得に寄与しているものと思考された.
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