研究概要 |
以前我々が樹立したヒト精巣胎児性癌株:TTSC-3をヌードマウスに移植した後、ソスプラチンを投与し、シスフフチンの抗腫瘍効果とTTSC-3の遺伝子発現の変化をcDNAアレイにて検討した。シスプラチンの投与量が低容量では抗腫瘍効果は認められなかったが、高容量では著明な抗腫瘍効果が認められた。中等度の容量を用いると、腫瘍の大きさはほとんど変化せず、細胞分化が誘導されていた。その際の遺伝子発現変化をcDNAアレイを用いて検討したところ、アポトーシス誘導に関わっている因子であるTumor necrosis factor receptor 1、Caspase 8、Apaf 1の遺伝子発現の増強が観察された。以上の結果から、シスプラチンは精巣胎児性癌に対して分化を誘導し、Tumor Dormancyを誘導できることが明かとなった。その際に何らかの細胞におけるアポトーシス誘導がその分化誘導に関与している可能性が示唆された。 シスプラチン耐性克服因子として癌細胞にのみアポトーシス誘導効果を有するTumor necrosis factor-related apoptosis-indudng ligand(TRAIL/Apo-2L)に関して検討した。標的細胞として、3種類の膀胱癌株化細胞(T24,J82,HT1197)と3人の膀胱腫瘍患者より手術時に採取した膀胱癌組織より作製した膀胱癌初期培養細胞を用いた。TRAILとシスプラチンとを併用したところ、T24細胞に対して相乗的殺細胞効果が認められた。シスプラチン耐性T24細胞、他の膀胱癌株化細胞であるJ82,HT1197細胞、膀胱癌初期培養細胞を標的細胞に用いても同様に相乗的殺細胞効果が認められた。以上の結果から、膀胱癌に対して、アポトーシス誘導によるTRAILとシスプラチンとの併用療法の可能性が示唆された。
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