研究概要 |
GnRHアナログはGnRH受容体陽性腫瘍に作用し,アポトーシスを惹起する。しかし,これらの腫瘍では,GnRH様ペプチドも産生されていることが知られている。本研究では,腫瘍細胞増殖に関与するGnRHのオートクリン調節機構を再検討した。手術的に摘出した卵巣癌・子宮内膜癌組織のGnRH受容体をスクリーニングし,陽性細胞を初代培養に供した。GnRHmRNAはRT-PCR法で検出した。細胞内および培養液中のGnRH様ペプチドは,トリシン-ポリアクリルアミドゲル法で電気泳動後immunoblottingで分析した。その結果,いずれの組織にもGnRHmRNAが存在し,その細胞質画分には分子量10kDaのプレプロGnRH,7.6kDa(プロGnRH)および1.1kDa(GnRH)が検出された。しかし,GnRH受容体陽性腫瘍の培養液中には,10kDa(プレプロGnRH)および7.6kDa(プロGnRH)が検出できたが,1.2kDa(GnRH)は認められなかった。コントロールとして用いた絨毛細胞の培養液には,1.1kDaのGnRHのみが存在した。以上のことから,卵巣癌や子宮内膜癌では,GnRHの前駆ペプチドからGnRHへの成熟過程が障害されていることが示唆された。GnRHはデカペプチドとして分泌されて作用を発揮するが,腫瘍細胞ではプレプロGnRHやプロGnRHが分泌され,GnRH受容体を占有することが推定される。このことが,GnRH受容体の抗増殖シグナルをブロックし,GnRH感受性腫瘍の増殖に関与しているのかもしれない。
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