研究概要 |
蛋白質SerおよびThr残基のリン酸化が細胞増殖に関与している。しかし,その脱リン酸化反応に関しては未解決な面が多く残されている。今回,Ser/Thrホスファターゼ(protein phosphatase type 2A, PP2A)の子宮内膜癌細胞内分布と細胞死における役割を検討した。子宮内膜癌細胞株を培養して用いた。細胞数はMTTアッセイ法で定量し,アポトーシスはHoechist33342色素によるDNA断片染色法で検討した。細胞分画はホモジネートを密度勾配超遠心法で調製し,PP2A蛋白と活性は,それぞれ免疫染色とリン酸化Ser/Thr合成基質の脱リン酸化反応で測定した。内膜癌細胞の形質膜および細胞質にPP2Aが活性および蛋白レベルで検出できた。細胞をオカダ酸あるいはNaFでインキュベートすると濃度依存性に1)形質膜PP2Aが対照の90%にまで抑制,2)アポトーシスが20%に生じ,3)細胞数は20%減少した。ゴナドトロピン放出因子(GnRH)は1)対照と比し細胞数を20%減少したが,2)形質膜PP2Aを最大1.5倍に促進し,3)アポトーシスの亢進は生じなかった。PP2Aの抑制がアポトーシスを促進することが報告されている。膜癌細胞でもこのPP2A-アポトーシス系が機能していることが確認できた。しかし形質膜PP2Aを活性化するGnRHは細胞増殖を抑制するにもかかわず,アポトーシスを亢進しなかった。GnRHの抗腫瘍シグナリングはPP2A-アポトーシス系とは独立している可能性が示唆された。GnRHIIはGnRHと受容体レベルで拮抗的し,その作用を抑制することも推測された。
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