研究概要 |
グリア細胞株由来神経栄養因子(glial cell line-derived neur otrophic factor, GDNF)を新生児ラット低酸素性虚血性脳障害モデルに、低酸素虚血負荷後に投与したところ、容量依存的に障害を軽減させた。GDNFの臨床的応用の可能性が認められたため、本年度はさらなる研究を以下の如く行った。 (1)脳の発達に伴うGDNFの発現 生後1-21日目のラット脳を摘出し、各細胞のGDNFの発現を、免疫組織化学的に検討したところ、早期新生児期には、神経、非神経細胞がそれぞれ特異なパターンを持って発現していた。GDNF発現は、21生日までには認められなくなった。また、脳脊髄液中のGDNF濃度は7-9生日がピークとなる変化を示した。 (2)低酸素性虚血性負荷に対する発現 7生日ラット低酸素性虚血性脳障害モデルにおいて、低酸素虚血負荷後、3時間と48時間以降にピークを認める2峰性のGDNF発現増加を認めた。前者は、神経とグリア、後者は、集簇アストロサイトからの発現であった。 (3)副腎性ステロイドのGDNF発現作用 生後1-3生日に渡って、新生仔ラットに合成糖質コルチコイドであるデキサメサゾンを投与したところ、脳脊髄液中のGDNF濃度がコントロールに比較して、早期に上昇した。しかし、10生日からは逆にコントロールよりも有意に低下した。副腎性ステロイドの神経熟化作用の一部を説明するものと考えられた。 (4)GDNFの腕神経叢障害(Erb麻痺)への効果 新生仔ラットを用い、腕神経叢障害モデルを作成し、GDNFをしみ込ませた、ゲルフォルムを障害後に障害局所に投与したところ、組織学的だけでなく、行動学的にも著明に神経障害を軽減させた。以上、GDNFは未熟ラットに対して、中枢神経のみならず末梢神経に対しても、保護効果を示した。
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