研究概要 |
子宮内膜において初期免疫応答の鍵を握ると推測されている樹状細胞(DC)の解析を試みたが、内膜局所でのDCの存在は免疫染色で確認されるものの、量的な制約からその分離や機能解析、あるいは周期的変動の検討は困難であった。そのため、妊娠各週の妊婦末梢血から得られたリンパ球からCD3,7,14,16,19抗原陽性細胞を免疫ビーズ法で除去し、さらにその中のMHC class II強陽性の細胞をミエロイド系DC前駆体(CD1a+/CD11c+,CD1a-/CD11c+)およびリンパ球系DC前駆体(CD1a-,CD11c-)に分離してその比率の変化を検討した。末梢血中リンパ球の約0.1%がDC前駆細胞であり、絶対数は少ないものの妊娠初期中期にはリンパ球系DCが多く、妊娠の進行と共にミエロイド系DCの相対的増加があることが明らかとなった。これらDCの変動には卵巣性ステロイドホルモンや胎盤由来因子が関与していると推測され、in vitro実験ではミエロイド系DCの増加に対する絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の有意な影響が確認された。DCは着床後の胎児抗原の認識においてもその最初の段階に関わると考えられ、妊娠に伴う特徴的なTリンパ球サブセットの変化(Th1/Th2比の低下)とも関連性が注目されている。また子宮内膜NK細胞の急増との関連についての解析も必要で、そのため、昨年報告した子宮内膜間質細胞からプロゲステロン依存性に産生されるNK細胞分化増殖因子であるIL-15がこのDC細胞に与える影響も検討中である。
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