研究課題
子宮収縮の調節に関係している電位依存性T-type Ca^<2+>チャネルは、最近、Perez-Reyesらによってa1G,a1H,a1Iの各サブユニットが相次いでクローニングされ、これまでまったくわからなかったT-typeチャネルの分子構造とチャネルの性質等に関する研究が端緒についたばかりである。ヒト子宮標本を用いたRT-PCRの結果、a1G,a1Hが存在するが、a1Iは殆ど無く、ヒト子宮筋収縮におけるこの前2者のサブユニットの重要性がうかがわれた。そこで、ヒト子宮筋組織よりcDNA libraryを作製、増幅に高い正確性を持つDNA polymerase(KodPlus)を用いa1HサブユニットのPCR cloningを行った。子宮筋より得たクローンのSequencingの結果は、Perez-Reyesらの発表した塩基配列(Origin:Human heart)よりC端が780bp程長かった。また、細胞内C端側の長鎖の中程に11個のアミノ酸(塩基33base)を欠損する、またドメインIIIとIVの間の細胞内ループの中程に6個のアミノ酸(塩基18base)を欠損するsplice variantと考えられる二つのクローンも同時に得ることができた。このクローンをBHK細胞に発現させたところ、これまでの報告と一致する電流を得た。今後、この発現系を用いて詳しく検討していく予定である。一方、産科臨床では未熟児出生防止のために切迫早産の薬物療法が重要な治療法の一つになっているが、現在、子宮筋細胞内外のCa^<2+>の移動に大きな影響を与えて子宮収縮を抑制するアドレナリンβ_2受容器作用薬の塩酸リトドリンが第一次選択薬として汎用されている。ところが、まだ心循環系への副作用が強く、長期投与が不可能な症例も多い。そこで今回、製薬会社との共同研究の中で新しい副作用の少ないアドレナリンβ_2受容器作用薬を開発して発表した。現在、妊娠ヒト子宮筋での効果を検討中である。
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