研究概要 |
1)Ten-m2特異的抗体の作製:Ten-m2 C末のアミノ酸配列から合成されたペプチドを抗原としてポリクローナル抗体を作製した。他のTen-mの組み換え蛋白または組織切片染色により特異性は確認された。併せて他のTen-m蛋白に対するモノクローナルあるいはポリクローナル抗体を作製し、脳での発現を調べた。胎生期のTen-m2の発現に関しては他Ten-m遺伝子の発現とwhole mount in situで比較検討 2)マウス脳におけるTen-m2リガンドの検出:申請書に記述したTen-m2細胞外ドメイン組み換え蛋白をHEK293細胞に発現させ、脳抽出液よりリガンドの検索を行った。Ten-m2細胞外ドメインに結合する蛋白のバンドをSDS-PAGEにて確認しているが、同定は行われていない。 3)ヒトTen-m2遺伝子染色体座マッピング:G3 RHパネルにより、Ten-m2,3,4各遺伝子はそれぞれ5,4,11番染色体に位置することを明らかにし、OMIM等によりその遺伝子座にマップされた遺伝性疾患があるかどうかを検索したが、重要な候補は存在しなかった。 4)Ten-m2ノックアウトマウスの表現型解析:(1)II型膜貫通蛋白であるTen-m2の膜貫通ドメインに相当するエキソンにネオマイシン遺伝子断片を挿入することによりTen-m2ノックアウトマウスを作製した。現在、関連Ten-m遺伝子の発現、組織レベルの異常、phenotypeについて観察中である。Ten-m2遺伝子は確かにノックアウトされていることはmRNAレベル、タンパク質レベル両方共に確認された。胎児期E10.5以降に頭部に発現していることから胎児期の頭部発達に異常が見られる可能性も考えられたが、組織レベルではその異常は見られていない。(2)生後脳の成熟に伴う組織上の異常があるか野生型と比較を行ったが明らかな違いは見られなかった。申請時に計画したMonbaertsらの匂い受容体遺伝子(P2)ノックインマウスとの交配に入る前に神経軸索特異的タンパク質MBPの抗体染色により検討を行った.(3)他Ten-mファミリー遺伝子の機能的代償の可能性について、研究初年度に作製した各遺伝子特異的ポリクローナル抗体、あるいはモノクローナル抗体を使用して検討を行ったが有意な違いは認められなかった。 5)マウス脳におけるTen-m2リガンドの検出:(1)Ten-mファミリータンパクの細胞外ドメインは既存のタンパクのドメイン構造にホモロジーが少ない構造上ユニークなものと考えられ、その構造解析はリガンド検出に重要である。4メンバー全部をHEK293細胞で発現させ、電子顕微鏡観察すると全てジスルフィド結合を介した二量体を形成していることが分かった。論文作製中である。(2)匂上皮の投射には細胞外マトリックス分子が関与する可能性があるとされ、リガンド候補分子としてCSPG(コンドロイチン硫酸プロテオグリカン)を想定し発現解析関連遺伝子のクローニングを行った。その結果、ヒアルロン酸結合新規脳リンクプロテインをクローニングし、発現について論文化することができた。
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