研究概要 |
本研究は今回の研究は内耳障害の発現機構をフリーラジカル(NO、活性酸素)との関連から分子生物学的レベルで解明すると供に、内耳感覚細胞の障害過程の各々の段階を阻害、修飾することで、めまい、難聴の新たな治療法の開発を行う目的とした。 内耳障害の発現に際しては、内耳障害性の刺激により内耳でNOやROSというフリーラジカルが産生され、内耳が障害を受けること、それに引き続き感覚細胞がアポトーシスを起こし死んでいくこと、その時にアポトーシス関連因子であるカルパイン、カスパーゼが感覚細胞で発現するというメカニズムが解明された。これらの機構は広く内耳障害全般に共通するものであることが明らかとなった。このことを基礎にして、内耳障害軽減方法の開発のために、フリーラジカル、ニューロトロフィン、アポトーシス関連酵素の阻害などによる内耳障害の軽減作用について検討した結果、フリーラジカルの制御、アポトーシスの制御、ニューロトロフィンの投与、いずれもが内耳障害軽減効果を有し、その程度はほぼ同等であることが明らかとなった。さらに、各種薬剤の併用効果を検討した結果、フリーラジカルの制御+ニューロトロフィンの投与、フリーラジカルの制御+アポトーシスの抑制といった作用機序の異なる組み合わせで併用効果が上がることがわかった。これらの結果を基にコントロール不良のメニエール病の治療に抗酸化剤(ビタミンC、グルタチオン、レバミピド)を応用した結果、めまいの制御は84%、聴力の改善は44%と良好な結果を得ることができた。 これらの成果は第23回日本炎症再生医学会、第10、11、12回日本耳科学会、第59,60,61回日本めまい平衡医学会、37th Workshop on Inner Ear Biology、第20回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会、第64回耳鼻咽喉科臨床学会で発表されると共に19編の論文にまとめられた。
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