研究概要 |
1)免疫組織化学的解析により、connexin 26,connexin 30が上皮系細胞、結合組織系細胞のいずれにも存在することを明らかにした。一方、connexin 31は結合組織系細胞に限局して発現しており、内耳におけるgap junctionの多様性が示された。 2)内耳における電位依存性カリウムチャンネルKv3.1bおよびKv3.4の発現を解析した。Kv3.1bはラセン靱帯fibrocyteに発現が見られた。Kv3.4は結合組織系細胞以外にも、感覚細胞及び周囲の支持細胞等でも発現が見られた。内耳におけるカリウムイオン輸送機構がこれらのチャンネルによってコントロールされていることが示唆された。 3)aquaporin (AQP)の発現を解析した。哺乳類内耳においてはAQP1とAQP4が豊富に発現していた。これらの水チャンネル蛋白の発現様式には明確な種差が存在していた。 4)gap junctionのblockerである長鎖アルコールの外リンパ灌流実験を行った。灌流後、内リンパ電位の低下がみられ、gap junctionを介したイオン輸送機構が内リンパ電位形成において重要な役割を担っていることが示唆された。 5)Brain-4遺伝子のノックアウトマウスにおいてラセン靱帯におけるconnexin 26およびNa, K-ATPaseの発現が著明に抑制されることを解明し、この動物にみられる内リンパ電位の低下および聴力障害がfibrocyte間のgap junctionを介したイオン輸送機構の破綻による可能性が強く示唆された。 6)臨床的研究として先天性難聴症例の内耳機能を聴覚生理学的に詳細に解析した。遺伝性難聴の病態を考える上で貴重なdataが得られた。 本研究の成果により、connexin遺伝子変異による非症候性難聴の解明において新たな一歩を踏み出すことが出来たといえる。
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