前年度、前々年度の2年間にわたる研究成果によって、薬物の新生血管部位へのターゲティングのための水溶性高分子にはデキストランが最適であることがわかった。そこで、デキストランにジエチレントリアミノペンタ酢酸(DTPA)をキレート残基として導入した。このDTPA導入デキストランを亜鉛の存在下、インターフェロン(IFN)-βと水溶液状態で混合した。これらの混合物を網膜に新生血管をもつウサギモデルに静脈内投与を行った。新生血管部位におけるIFNの蓄積量をELISAによって定量したところ、遊離IFNの静脈内投与に比較して、有意にIFN活性の高いことがわかった。このことは、金属配位結合を利用してデキストランと複合化させることにより、IFNを網膜下新生血管部位へターゲティングできることを示している。新生血管の状態を蛍光物質の血管からのもれを眼底カメラにより検出、定量化することにより調べた。その結果、複合体の投与により、蛍光物質のもれが抑制され、IFNの作用により新生血管が消失、治療効果が認められた。遊離IFN投与ではこのような治療効果は見られず、期待通りのIFNのターゲティング効果が実験的に確認、証明された。血管新生モデルをレーザー照射法あるいはbFGF徐放法の両方にて作製し、その両モデルについての治療実験を行ったが、いずれのモデルにおいても、金属配位結合法によるIFNのターゲティングによる有効な治療効果が認められた。
|