研究課題/領域番号 |
12470365
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
井上 幸次 鳥取大学, 医学部, 教授 (10213183)
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研究分担者 |
渡辺 仁 大阪大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (60252673)
中曽 奈美 鳥取大学, 医学部附属病院, 助手 (90335539)
宮ざき 大 鳥取大学, 医学部附属病院, 助手 (30346358)
林 皓三郎 神戸市環境保健研究所, 所長(研究職) (20012726)
大黒 伸行 大阪大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (00303967)
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キーワード | 角膜ヘルペス / T細胞 / 単純ヘルペスウイルス / DNAワクチン / gD / gD-IL-2 / サイトカイン / CD4細胞 |
研究概要 |
1.gDヘルペスワクチンの角膜ヘルペスに対する効果〜DNA投与と蛋白投与 単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)のenvelopeに表現されているglycoprotein D(gD)とヒトインターロイキン-2(IL-2)を融合させたgD-IL-2の蛋白ワクチンおよびプラスミドDNAワクチンのヘルペス性角膜炎に対する感染防御効果の評価をおこなった。方法としては、遺伝子工学的にgD-IL-2発現プラスミドおよびgD-IL-2蛋白を作製し,BALB/cマウスに対して、gD-IL-2蛋白については皮下もしくは結膜下注射で1μg/0.1mlを3週おきに2回ワクチン投与し、gD-IL-2プラスミド(DNAワクチン)の場合は、結膜下に90μg/0.05mlを2回投与した。gD-IL-2蛋白ワクチネーション後の感染防御効果の検討のため、ワクチン後のマウスにHSV-1のCHR3株を経角膜感染させ角膜炎の程度(上皮型、実質型)をスコア化した。gD-IL-2 DNAワクチンにおいても同様の臨床病変のスコア化をおこなった。その結果、gD-IL-2蛋白免疫群およびgD-IL-2 DNA免疫群のいずれにおいても実質病変の進展が有意に抑制されていたが、上皮病変は抑制されなかった。gD-IL-2 DNAはgD-IL-2蛋白に劣らない効果を有していることが示されたが、それでも上皮病変の抑制は困難であった。 2.角膜ヘルペス患者由来ウイルス株の疫学的研究 角膜ヘルペスの免疫学的制御を考える上で、ウイルス側の差異についての情報は重要である。得に上皮型と実質型の患者においてウイルスDNA側に何らかの差異が存在しているかは興味のあるところである。そこで29株の角膜ヘルペス患者より分離されたHSVについてDNA制限酵素切断パターンを比較検討した。その結果、これらの株は14の遺伝子型に分類された。実質型の再発を示した症例からのウイルス株のうち56%はF1 genotypeを示したが、実質型の再発を示さない症例からのウイルス株では、F1 genotypeを示すものは20%と有意に低かった。以前からF1 genotypeは性器や顔面のヘルペスにおいて再発と関連するという報告が成されており、今回実質型の再発を示す患者からのHSVにF1 genotypeを多く認めたことは、実質型がウイルス増殖と無関係な免疫反応(自己免疫など)による病態であるとの最近の一部の説に反して、やはりウイルス再増殖を前提とした病態であることを示す一つの証左と考えられ、逆にいえばすでに実質型へ移行している症例でもワクチンによって完全にウイルス増殖を抑制できれば再発を予防しうる可能性を示していると考えられる。
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