研究概要 |
神経麻痺性角膜症の病態を明らかにし,substance PやIGF-1の作用機序を解明することを目的に,上皮伸長や移動を測定する実験系として家兎角膜器官培養系を用い,培養した家兎あるいはヒト由来角膜上皮細胞や実質細胞を用いてコラーゲン分解,細胞内信号伝達系の役割の検討あるいは遺伝子発現の変化に関する研究を行った。角膜上皮および実質細胞において多くのサイトカイン,ケモカインあるいは成長因子に加えsubstance Pなどの神経性因子が細胞機能を制御していることを明らかにし,これらの反応に,protein kinase Cとtyrosine kinaseの共存が必要であること,small GTP-binding proteinであるRhoが密接に関与していることを明らかとした。またエキシマレーザーを用いて,角膜上皮層を剥離し上皮欠損の修復を蛍光抗体法で観察すると,基底膜成分であるlamininの出現と細胞間を接合する接着性タンパク質の発現とが協調していることが明らかとなった。一方,角膜実質細胞によるコラーゲン分解は上皮欠損寺の角膜潰瘍出現の一つの重要な機序であると考えられるが,細菌由来のelastaseにより角膜実質細胞によるコラーゲン分解が促進することが明らかとなり,上皮欠損,神経麻痺による神経伝達物質供給の低下さらにサイトカインの増加およぴ成長因子の低下などが,角膜上皮細胞のみならず実質細胞にも作動し一種の悪循環を招くことが明らかとなった。
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