研究概要 |
角膜上皮、結膜上皮の遺伝子発現プロファイル(Bodymapプロジェクト)から角膜特異的新規遺伝子としてカテプシンV、ウロプラキンIb、カルシウム依存性Clチャンネルを同定した。カテプシンVについては、弱酸性下で働くシステインプロテアーゼの機能を持つことを証明した。またウロプラキンIbについては従来から知られているカテプシンIbとは3'末端配列の異なるアイソフォームであった。新規のClチャンネルは染色体1p32に位置し、角膜上皮細胞で他のClチャンネルよりも100倍高発現していることから角膜上皮で重要な機能を持つ可能性が示唆された。 慢性期スティーブンスジョンソン症候群魯者の末梢血Tリンパ球と正常者の末梢血Tリンパ球の遺伝子発現についての検討では、HMG-1,calmodulinなどの遺伝子の発現が増加しており、ferritin L chain,56K autoantigen annexin XIなどの遺伝子で発現が低下していた。 同じくDNAチップによる羊膜上培養角膜の検討では、羊膜上培養角膜上皮細胞は正常角膜上皮細胞に比べて、IL-6、IL-13、IL-4などの遺伝子の発現が減少し、IGF結合蛋白、emmprin, CD27リガンドなどの遺伝子の発現が上昇していた。 またTT-PCRによる結膜上皮細胞のシェーグレン症候群と正常者との遺伝子発現比較では、ケラチン6,16、SPRR2A、kauikrein、IL-6,MIG, amphiregulin、HLA-DR、デイフェンシンβ2、フィプロネクチン、c-fosの発現が亢進していた。これらのことからシェーグレン症候群の病態には、上皮の角化および細胞分裂の亢進、創傷治癒反応の誘導といった乾燥による影響とMIG、HLA-DR、ディフェンシンの発現といった炎症による影響の二つの因子が関与していることが示唆された。
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