研究概要 |
本研究では,培養ミュラー細胞を用いて,種々の神経栄養因子およびその高親和性受容体の遺伝子発現をRT-PCRを用いて調べた。培養ヒトミュラー細胞は共同研究者である米国ミシガン大学のDonald G.Puro博士からの提供を受けた。対象とした神経栄養因子はNerve growth factor(NGF),Brain-derived neurotrophic factor(BDNF),Neurotrophin-3(NT-3)の3種類であり,受容体はtrkA,trkB,trkCの3種類である。その結果,培養ヒトミュラー細胞はNGF,BDNF,NT-3,trkB,trkCの発現が認められたが,trkAのみ発現が見られなかった。また増殖糖尿病網膜症と特発性黄斑円孔の硝子体を使用してNGF濃度をELISA法が測定したが,検出限界以下であった。以上の結果から,ミュラー細胞は種々の神経栄養因子を産生して,周囲のニューロンに対して保護的な役割を担っている可能性が示唆された。今後は,種々の病的状態における培養ヒトミュラー細胞の神経栄養因子の発現の変化を見ると当時に,家兎眼を用いて実験的網膜虚血を作成し,これらの神経栄養因子およびその受容体の発現を免疫染色を用いて調べてみる予定である。また家兎眼による虚血再灌流モデルを作成し,このモデルの硝子体腔内に神経栄養因子を注入することで,神経節細胞層の障害の状態をコントロールと比較検討する。将来的に神経栄養因子が網膜虚血性疾患に対する薬剤となりうるかを検討する予定である。
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