研究概要 |
今回の研究でわれわれは、BALB/cマウスの坐骨神経の3mmの欠損部にLewisラットの腓腹神経10mmを移植する異種神経移植のモデルを用いて実験を行った。移植群は、Group1:対照群(薬剤投与なし)、Group2: anti-CD4投与群(125μg/mouse,0.25ml腹腔内投与、移植2日前と移植直前の2回)、Group3: CTLA4Ig投与群(25μg/mouse,0.1ml腹腔内投与、移植直後と移植1,3日後の計3回)の3群に分けて行った。移植後の神経再生に関しては、運動機能として歩行状態をWalking tract analysisにより観察し、移植後8週後に移植神経部(Donor部)を取り出し、トルイジンブルー染色および免疫染色を行った。前者は再生神経の軸索直径や髄鞘の厚さを測定し、後者ではIgG抗体やマクロファージ抗体により細胞浸潤の程度を観察した。 Walking tract analysis後足の方向幅を患側と健側で比較するものであるが、3群間において移植後8週目まで改善は見られなかった。トルイジンブルー染色では、Group1では移植神経内には膠原線維が多く、有髄線維は散在性に認めるが径も細く髄鞘も薄かった。Group2,3では、有髄神経が移植神経内全体に認められた。いずれの群も径が太く髄鞘の厚い再生神経は移植神経片の外側に有意に多かった。 Anti-CD4やCTLA4Igの短期、少数回投与による末梢性免疫寛容の導入により、ラットマウス間での異種神経移植片を介した軸索再生は可能であることが判明した。今後、移植神経片に抗原性を低下させるような処置を加えることによりさらに良好な神経再生を期待できると思われる。
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