研究概要 |
骨組織は同じ硬組織である軟骨組織とは異なり、血管に富むことが大きな特徴の一つに挙げられる。そして血管の形成・侵入は骨吸収とともに骨形態形成・骨再生にとって不可欠である。また、骨吸収と血管との関係はガンの骨転移、慢性関節リウマチ、閉経後の骨粗鬆症、老人性骨粗鬆症などにともなった骨破壊・骨量減少といった病態においても適用される。本研究では、骨代謝で特に血管新生と深い関わりのある骨吸収系の細胞である破骨細胞の形成と機能に対して、強力な血管新生因子であるfibroblast growth factor-2(FGF-2)とvascular endothelial growth factor(VEGF), Gas6がどのように作用するかをin vitroおよびin vivoから解明した。 1.bFGFの成熟破骨細胞への作用:成熟破骨細胞にはbFGF受容体のうちFGFR1が特異的に発現していた。象牙片上で単離破骨細胞を培養し、そこにbFGFを作用させると容量依存的に骨吸収活性を促進した。また、骨基質分解に関与するcathepsin K, MMP-9の遺伝子発現を増加させた。しかし、破骨細胞の生存には影響を及ぼさなかった。bFGFは破骨細胞のチロシンリン酸化を速やかに促進し、それと同時にMAPKを活性化した。MEK inhibitorはbFGFの骨吸収促進作用を打ち消した。 2.VEGFの成熟破骨細胞への作用:成熟破骨細胞にはVEGF受容体であるFLT-1およびFLK-1を発現していた。bFGFを異なりVEGFは破骨細胞の生存を促進しそれに伴って骨吸収を促進した。VEGFは速やかに破骨細胞のチロシンリン酸化を速やかに促進し、チロシンキナーゼinhibitorはVEGFの骨吸収促進作用を打ち消した。 3.血管内皮細胞増殖因子であるGas6の受容体であるTyro3は破骨細胞の分化過程で成熟破骨細胞にのみ発現し、Gas6はMAPKの活性化を介して骨吸収活性および破骨細胞の機能タンパク質の発現を促進した。また、卵巣摘出によって骨髄でのGas6の発現が増加した。 以上の事から血管新生因子と破骨細胞の骨吸収活性の間に密接な共通点があることが示された。
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