研究概要 |
本研究は、グルマリン感受性(GS-SwR)及び非感受性(GI-SwR)の甘味受容体とレプチン受容体(Ob-Rb)を異なる組み合わせで発現するマウスを遺伝的に作出し用い、各受容体を発現する味細胞とそれにシナプスする味神経の選択性について分子遺伝学的及び神経生理学的に検索し、味細胞-味神経のシナプス形成と味細胞受容体関連分子発現の遺伝制御機構について検討することを目的としている。 A.遺伝的変異マウスのグルマリン及びレプチン感受性の行動学的及び神経生理学解析 GS-SwR欠損で、GI-SwRとOb-RbをもつBALBマウスと、GS-及びGI-SwRをもつがOb-Rbを欠損するC57-dbとの交雑系F2を育成し、昨年度よりその数をさらに増加させ、db/db個体を17匹選別した。D-フェニルアラニンの嗜好度はdb/db(17)と正常系(33)共に0.03Mレベルで二峰性の分布となりdpa-とdpa+に分類された。ショ糖に対する嗜好度は正常系でdpa+の方がdb/dbでdpa-が高く、サッカリンに対する嗜好は両群で差がなかった。それら各群の神経応答を検索したところ、dpa-とdpa+の分類とグルマリンによる甘味応答の抑制性がほぼ一致することが分かった。親系統C57の鼓索神経crush後の再生過程における、甘味応答の発現について予備的な検索を行ったところ、crush 3週後にショ糖、サッカリン、D-フェニルアラニンに対する応答が弱いものの見られることが分かった。 B.GS-SwR発現の組織学的検索及びOb-RmRNA発現の解析 GS-SwRについては抗体など準備状況が長引いており、まだ十分なデータが得られる状況に至っていない。また、各群マウスのOb-Rの発現をRT-PCR法で調べたところ、Ob-Ra, b, c, d, eの内、Ob-Reを除くすべてが味蕾を含む組織に発現していたが、Ob-Raの発現量がもっとも多かった。味細胞特異性があるガストヂューシンの発現パターンとOb-Rbの発現パターンが一致していたことから、Ob-Rbの味細胞特異性も示唆された。
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