研究概要 |
1.臨床的検索:粘表皮癌における主にエストロジェン・レセブター(ER)の発現動態と各腫瘍構成細胞の病理組織学的動態を免疫組織学的に検索した。対象は、本大学大学院口腔病態学講座において粘表皮癌と診断された19症例とした。ER,progesterone receptor(PgR),の発現様式、MIB-1による増殖活性、cytokeratin(CK)6,7,8,13,19の発現様式を病理組織学的に検索した。 結果:粘表皮癌の53%にERが発現していた。腫瘍構成細胞による相異は、類表皮細胞は中間細胞より、ERの発現率が高く、粘表皮細胞では発現細胞は僅かであった。ERの発現はWHO分類の高分化型に多く、MIB-1は低分化型に高い傾向を示した。原発巣とリンパ節転移巣とでERとCKの発現様式が異なる症例もあった。CKの発現様式では、粘液産生細胞と導管様構造細胞に腺系マーカーのCK-7、8、19、が発現し、類表皮細胞では、CK-13が多く発現し、CK-7、8、19の散在的発現も認められた。CK-6は低分化型の中間細胞や類表皮細胞に多く発現した。これらの結果からERは腫瘍細胞の分化、に関連していることが示唆され、また、ERの役割に性差の存在の可能性が推察された。 2.実験的検索:雌Wistarラットを用い、卵巣非摘出または卵巣摘出後にDMBA(9,10,-dimethyl-1-,2-benzanthracene)を投与、あるいはDMBA誘発腺癌発育後に卵巣摘出やtamoxifenを投与し、ERおよびCKなどを用いた免疫組織染色を行い検索した。 結果:腺癌の発生は雌に多発し、また、腺癌から扁平上皮癌への移行がみられ、腺癌から扁平上皮癌への移行像を示す扁平上皮様組織像を示す部分では、ER発現細胞は減少し、組織像の移行にはエストロジェンの関与が示唆された。
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