研究概要 |
1.臨床的検索:粘表皮癌および腺様嚢胞癌におけるエストロジェン・レセプター(ER)の発現動態と各腫瘍構成細胞の動態を病理組織学的、免疫組織学的に検索した。ER,progesterone receptor(PgR)、MIB-1、PCNA、cytokeratin(CK)6,7,8,13,19などの抗体およびTUNEL法を用いた。 結果:粘表皮癌のER発現は53%で、腫瘍構成細胞では、類表皮細胞は中間細胞より高く、粘表皮細胞では僅かであり、WHO分類の高分化型に多く、原発巣とリンパ節転移巣とで異なる症例もあった。CKの発現は、粘液産生細胞と導管様構造細胞に腺系マーカーが発現し、類表皮細胞ではCK-13が多く、腺系マーカーも散在的にみられ、CK-6は低分化方型の類表皮細胞、中間細胞に多く発現した。この結果、ERの腫瘍細胞の分化・増殖への関連が示唆され、また、性差の存在の可能性が推察された。 腺様嚢胞癌のER発現は組織像で異なり、充実部で約45%、筋状部で53%、線管部で26%であった。各組織形態においてERとPCNAに相関した発現を認め、ER陽性率では筋状、線管状を示す組織が充実性に比べPCNA強陽性例で多く発現し、エストロジェン依存性増殖が高い可能性が示唆された。 2.実験的検索:雌Wistarラットを用い、卵巣非摘出または卵巣摘出後にDMBA(9,10,-dimethyl-1-,2-benzanthracene)を投与、あるいはDMBA誘発腺癌発育後に卵巣摘出やtamoxifen投与行い、臨床的検索に準じて検索した。 結果:腺癌は雌に多発し、腺癌から扁平上皮癌への移行がみられ、移行像を示す扁平上皮様組織像の部分では、腺癌のER発現細胞にアポトーシスがみられ、ER発現細胞は減少した。組織像の移行には性ホルモンとレセプターの動態の関与が示唆された。
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