本研究計画は、口腔粘膜上皮におけるストレス感受性MAPキナーゼ分子群の代表的分子としてのASK1ならびにASK2に着目し、特にノックアウトマウスの作製によりその生理的・病態科学的役割のより一層の解明を目的とした。また、アポトーシスのシグナル伝達におけるASK1・MAPキナーゼ系の機能を中心に解析を行い、以下に列挙する知見を得た。1)ASK1ノックアウトマウスの解析から、ASK1・MAPキナーゼ系がTNFならびに酸化ストレスによって誘導されるJNKとp38の持続的活性化に特異的に必要であること、またTNFならびに酸化ストレスによって誘導されるアポトーシスに必須の分子であることが明らかになった。2)ASK1活性化機構として、新たにASK1同士の強いオリゴマー形成に伴う活性化ループの自己リン酸化の重要性が明らかになった。3)ASK1はその活性化の程度に応じてアポトーシスのみならずケラチノサイトの分化を誘導しうることが明らかになった。さらに、p38MAPキナーゼ阻害剤を用いた実験等から、ASK1による細胞分化誘導は主にp38MAPキナーゼが活性化されることによるものであることが示唆された。4)少なくとも2種類のphosphatase、PP5ならびにCDC25Aがそれぞれ異なるメカニズムによるASK1の抑制性制御機構として機能することが明らかになった。5)ASK1が仲介する新たなシグナル伝達機構として、小胞体ストレスによるアポトーシスが判明した。
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