研究課題/領域番号 |
12470400
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
石原 和幸 東京歯科大学, 歯学部, 助教授 (00212910)
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研究分担者 |
奥田 克爾 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (40085741)
三浦 直 東京歯科大学, 歯学部, 助教授 (10266570)
西田 次郎 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (50198470)
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キーワード | Helicobacter pylori / Campylobacter rectus / Oral cavity / Heat shock protein / Colonization / Adherence / Shared antigen / Periodontitis |
研究概要 |
Helicobacter pyloriは、胃潰瘍および十二指腸潰瘍の病原体である。本菌の感染は、胃癌の誘引になる事が示唆されている。しかし、本菌がどの様なメカニズムでこれらの疾患を起こすかについてはいまだ不明な点が多い。本菌の感染経路は主に口腔からと考えられている。本菌の治療には、抗菌剤投与が行われているが、抗菌剤による除菌失敗の理由として口腔内のH. pyloriが除菌時に残存し再感染の原因となると言う報告もされている。本研究では、口腔にH. pyloriが存在するか否かを明らかにするとともに本菌に対する免疫応答を解析しその病態との関与を解析した。 本菌が口腔内に定着する手段としては口腔粘膜またはデンタルプラークに付着する事が必要である。われわれは、本菌が口腔への定着手段としてPorphyromonas gingivalis, Fusobacterium nucleatum等の細菌に共凝集する事によってプラークに付着する事が出来る事を明らかにした。しかしプラーク形成におけるearly colonizerであるStreptococcus oralis等のレンサ球菌属に本菌の増殖を阻害するため、プラークに定着する可能性は低いと考えられた。実際に、胃潰瘍の患者口腔サンプルからのH. pyloriを検出するとその頻度が胃に比べて低い結果となり、in vitroのからの仮説と矛盾しない結果が得られた。 H. pyloriの病原性には宿主の免疫応答が重要な役割を担っていると考えられている。口腔内にはH. pyloriと近縁のCampylobacter rectusが定着している場合がある。本菌は、H. pyloriと交差反応性抗原を持つ可能性があり、それが病態にも影響を与えている可能性が考えられる。唾液抗体価はIgG, IgA共にC. rectusとの間に相関が認められた。Immunoblotによる解析でもH. pyloriに対するウサギ抗体がC. rectusのタンパクに反応する事およびその逆を確認する事が出来た。Heat shock proteinは、慢性炎症への関与が示されているが、H. pyloriのheat shock proteinは、C. rectusのほぼ同じサイズのタンパクに反応していた。さらに萎縮性胃炎の患者の血清をC. rectusにより吸収した後H. pyloriを抗原としてimmunoblotを行うと吸収前の血清では認められたバンドが消失している事を示す事が出来た。これらの事から1.H. pyloriは、口腔に一過性に付着するものの定着はせず胃に定着する。2.歯周病原菌であるC. rectusは、その交差反応性からH. pyliriこ対する防御応答に修飾を与えている可能性が考えられた。
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