研究概要 |
スミアー層を除去した後の湿潤象牙質とレジンが再現性よく強固に接着するためにはエッチングによって露出した象牙質コラーゲン層と歯質の間に十分モノマーが拡散し,重合硬化した層が必要である.現在,スミアー層の除去剤として世界的に広く用いられているリン酸水溶液は脱灰力が強いため歯質へのダメージが大きい.そこで,脱灰による象牙質へのダメージを低くできるEDTA(エチレンジアミン四酢酸塩)をスミヤー層除去剤として使用し可及的に薄い脱灰象牙質層を生成させ,光重合型ボンディング材により湿潤象牙質層に樹脂含量の多い樹脂含浸象牙質層を生成させる接着システムと表面処理剤及び接着促進モノマーの開発を行ってきた. また,接着試験片の走査型電子顕微鏡,透過型電子顕微鏡,原子間力顕微鏡により接着促進モノマーの効果,樹脂含浸象牙質及び被着体の変化を詳細に観察した. EDTAを用いると脱灰象牙質層を1μm程度と薄くでき,そこに,接着促進モノマーとしてPhenyl-Pを用い,ウェットボンディング法によりPhenyl-P/Acetoneをプライミングし,光硬化型ボンディング材を塗布し重合させた.それにより含浸樹脂量が多く,安定した接着が期待できる接着システムを構築できた.原子間力顕微鏡を用い,樹脂含浸象牙質層の樹脂含量の定量化的に評価する方法も従来のTEM観察の手法と組み合わせて議論した.可及的に薄い脱灰象牙質と健全象牙質の界面にモノマーが拡散し,硬化した樹脂含浸層が生成することにより,安定した接着力が期待でき,歯質に対するダメージの軽減を図れることがわかった.
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