研究概要 |
本年度の研究テーマのひとつとしては、培養歯髄細胞における一酸化窒素合成酵素(Nitric Oxide Synthetases,'NOSs)の血管型NOS(endothelial NOS, eNOS)および誘導型NOS(inducible NOS, iNOS)の遺伝子レベル・蛋白質レベルにおける発現をRT-PCR法ならびにNorthrn blot法、in situ hybridization法、Western blot法、immunohistochemistry法にて発現ならびに局在の解析をおこなうと同時に、Southwesren blot法による転写因子NF-κBの発現を分子生物学的および形態学的に検索することであった。しかしながら、ラット歯髄細胞のプライマリーカルチャーはその収量の点から非常に少なく、上記の分子生物学的および形態学的検索をおこなうには不十分な細胞数であった。現在この点を改良するために培養方法の検討を精力的におこない、ラットプライマリー歯髄培養細胞の大量培養を試みている。一方、昨年度の結果より、正常ラット臼歯歯髄象牙芽細胞におけるeNOSおよびiNOS、NF-κBの発現を状態を明らかとし、正常状態での歯髄象牙芽細胞における一酸化窒素(Nitric Oxide, NO)の機能が推測された。本年度では、さらに臼歯切削モデルにおける歯髄内細胞の変化ならびにeNOSおよびiNOS、NF-κBの発現変化を検索した。上顎臼歯近心面切削後2日目における窩洞直下象牙質/歯髄界面では、非切削象牙質/歯髄界面と比較して、大型の細胞が配列し、活発な修復象牙質の開始が認められた。さらにこれらの細胞では、正常状態と比較して、とくにiNOSならびにNF-κBの免疫反応性が強く認められた。したがって、切削刺激により象牙芽細胞において大量のNO産生が推測され、NOによる細胞機能の賦活化による修復象牙質形成への関与が示唆された。
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