研究概要 |
本研究の目的は、歯根膜内のマラッセ残存上皮と線維芽細胞を用い、上皮構造に類似した三次元構築を行い、上皮細胞の分化窩底や組織構造を検索することである。生後約6ヶ月のブタの下顎骨を入手し、第1、第2乳臼歯を分割抜去後、実体顕微鏡下で歯根の中央1/3相当部から歯根膜組織を剔削採取した。37℃、CO_2下で初代培養を行った。得られた線維芽細胞をコラーゲンゲル培養し、上皮細胞を0.8x10^5/mlの割合で表面に播種した後、air-medium interfaceで1,2,3,4週の培養を行った。実験終了後、標本は一部からパラフィン切片を作製し、HE染色、マッソントリクローム染色を施した。残りの一部はOCTコンパウンドで包埋後に凍結切片を作製し、免疫染色を施して光顕で観察した。なお、コントロールとして、ブタ歯肉のパラフィン切片と凍結切片を使用した。 肉眼的には培養後1日目にはコラーゲンゲルの厚さが減少して垂直的に薄くなったが、水平的には収縮せず、1〜4週の経時的観察でも大きさに変化がなかった。また、上皮を播種しない例では、透明感が継続してみられたが、上皮播種のものでは1週後にはやや白色を帯び、不透明化を示した。HE染色所見では、1週後において上皮細胞は重層扁平化を示し、多層構造を示したが、2,3,4週では細胞が分離を呈しバラバラになる所見を呈した。免疫染色によれば、上皮細胞はコントロールのブタ歯肉と同様のケラチンを発現した。この上皮層は2週目より細胞間の離開状態がみられ、細胞が散在する様相が観察された。さらに3,4週では、下層のゲル内培養を行った線維細胞層の厚みが減少傾向を示し、上皮には散在化の著しい部分やゲル層の極端に薄い例もみられた。歯根膜から得られた線維芽細胞と上皮細胞を用い、コラーゲンゲル内培養による三次元培養を行った組織は、歯肉に類似した形態とケラチン発現を示したが、経時的に細胞の分散化がみられ、歯肉のような強固な細胞間結合はみられなかった。
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