研究概要 |
歯根膜組織は線維芽細胞や上皮細胞、骨芽細胞およびセメント芽細胞に分化しうる未分化間葉細胞など多彩な細胞によって構成されており、いずれの細胞が破骨細胞に対して分化抑制に作用しているのか、あるいは分化促進に作用しているのか明らかにされていない。本研究では歯根膜組織を構成する細胞群から細胞を単離し、クローン化した後、破骨細胞分化促進支持能および抑制能を指標としてクローン細胞をスクリーニングする。同時に破骨細胞の分化因子である破骨細胞分化誘導因子(ODF(OPG/OCIFligand))とOPG/OCIFとのmRNAの発現を検索し、破骨細胞の分化支持能との関係を解析とBIACORE(生体分子相互作用解析装置)を使用して未知のリガンド探索を研究目的とした。その結果、312種類のマウス株化歯根膜細胞を単離、確立し、すべてのマウス株化歯根膜細胞とマウス骨髄細胞を共存培養することにより破骨細胞の誘導を行った結果、7株化細胞に破骨細胞誘導能が認められた。7株化細胞のうち3株化細胞(MPDL-7,27,30)には破骨細胞分化支持細胞であるMC3T3-G2/PA6と同等の破骨細胞誘導能が示された。MPDL-7,27,30細胞はOsteopontin mRNA, Osteonectin mRNA発現およびALPase産生が認められたが、Ostecalcin mRNA発現は認められなかった。さらに、すべての細胞にODFmRNAの発現が認められ、MPDL-27,30にはOPG/OCIFmRNAの発現が認められた。しかしながら、OPG/OCIFとOPG/OCIFligandに対する未知のリガンド探索をBIACOREを用いて新たなリガンドの発見を試みたが、すべて既知のリガンドしか認められなかった。これらの結果から、歯根膜細胞は破骨細胞分化に直接関与するODFmRNAとOPG/OCIFmRNAを発現し、破骨細胞の分化を制御することにより歯槽骨吸収抑制に関与していることが示された。
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