研究概要 |
1.高齢者大学受講生の食生活と咀嚼状況に関するアンケート調査 平成12年度の新潟県高齢者大学教養講座受講生を対象に,身体状況,食生活,咀嚼状況,義歯使用状況に関する項目からなるアンケート用紙を配布し,次回の講義日に回収する方法で282名から回答を得た.平成11度に実施した調査回答を加算し合計382名(男性227名,女性155名,年齢55〜80歳)のデータを分析した.食習慣では,多くの人が栄養のバランス,野菜をたっぷり,魚を肉より多めにとるなどに心がけていた.健康状態の自己評価が悪い群では,硬い食品や水分含有量が少ない食品を食べにくいと回答する比率が高かった.前歯と片側の臼歯,あるいは前歯で食物を咀嚼する比率が高く,その理由として歯の欠損を放置,義歯では咬みにくいなどであった.調査結果を第48回JADR学術大会にて報告した(日本大学松戸歯学部,2000.12.3). 2.高齢者における咀嚼能力と栄養摂取状態の調査 上記のアンケート調査参加者で,新潟大学歯学部附属病院での面接調査に同意した60名(男性39名,女性21名,平均年齢65.3歳)を対象として,1)口腔内状況:歯の欠損,補綴修復状態,う蝕・歯周疾患の状態,2)咬合状態:咬頭嵌合位での咬合接触歯と臼歯部咬合のアイヒナー分類,デンタルプレスケールで測定した最大咬合力,3)咀嚼能力:試作グミゼリーを10回咀嚼後の溶出グルコース濃度を測定して求めた咀嚼能率,4)栄養摂取状況:簡易食物摂取状況調査表から分析したエネルギー,タンパク質などの摂取量を調査した.アイヒナー分類が同じであっても,義歯装着者は義歯不使用者に比べエネルギー充足率には差が無いものの,タンパク質充足率が低い傾向があった.また,咀嚼能力が高い群ではエネルギー充足率に過不足が少なくなる傾向が認められ,口腔内状態や咀嚼能力は高齢者の栄養摂取に影響している事が示唆された.
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