研究概要 |
本年度は,チタンインプラント体と骨との結合部の力学的特性をモデル化することにより.神経細胞の持つべき特性を検討した 1.力学的構造解析:有限要素法を用いて,力学特性のモデル化をおこなった.構造解析のモデルは,インプラントの軸対称性を利用してモデルを構成した中心軸まわりの回転体として表現した.インプラントの形態は直径4mmの円筒形として,骨内に埋入する部分の長さを15mm骨縁上の長さを10mmとした.骨に生着した状態を考慮して皮質骨はインプラント体を覆う形とした.荷重はインプラントの長軸に対して45度の方向から14Nの静荷重をかけた. 2.結果:応力は根尖相当部の角に集中する事が分かったが,その絶対値は小さかった.y軸(内外)方向の変位量は大きな変位を示す部位がインプラント体から離れた部位にあることがわかった.このことは,力感覚器官がインプラントに密着していないほうが効率的であることを示している.総エネルギー密度でもインプラント最下点の位置より2.5-5mm下に最大値があることがわかった. 3.構造的要請:神経細胞が受容器において力を検出するには,力による変形が必要である.この点に着目すると,この研究の結果から,感覚受容器はインプラントに接触した部位ではなく,少し離れた皮質骨と海綿骨の境界近くに存在したほうが,力の検出能力が高くなる事が分かった.つまり,インプラントが骨と密に融合したいわゆるオッセオインテグレートの状態では,インプラントと骨の間に感覚器官が存在しても,ほとんど変位が無いため,力の検出能力は低くなることがわかった.従って,神経線維を誘導するなら骨の中の皮質骨と海綿骨の境界付近に誘導すべきであることが分かった.
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