研究概要 |
本研究では顎関節症発症の寄与因子を探るために、5年間の自然経過を追う予定であるが、4年計画の第3年度にあたる平成14年度では、64名の5年経過後の調査を行った。調査内容は、質問表(顎関節症の有無、既往、生活習慣、健康調査、口腔悪習癖、嗜好等)による調査、口腔内所見(欠損状態、咬合状態、歯列不正、開口量測定等)、心理テスト(CMI, SDS, MAS, Y-G, INV, TEG, Life Events and Life Changes)、下顎運動測定、咀嚼筋筋電図検査、咬筋圧痛閾値測定である。この結果、昨年までの調査を含めると110名分の5年経過後のデータを蓄積できた。 また、追跡期間の中間となる2.5年経過時のデータに関しても45名を対象に調査を行った。この結果本年度までで255人のデータが蓄積されたことになる。中で、初年度に顎関節症状を認めたものは8名、2.5年後に新たに顎関節症状を訴えた者が7名であった。発症者率が18.9%と他の報告とほぼ同じ頻度であり、調査対象が一般集団を反映したものであるとみなして差し支えないことが示された。 下顎運動の解析結果から、以下のことが導き出された。 (1)顎関節症状を発症した時点での運動距離は抑制され、顎機能状態を反映することが確認できた。(2)初年度のデータから症状発症をに対する予知性を認めなかった。 (3)症状を発現しなかった対象者のデータから、経年的な変動が少なく下顎移動量は安定したパラメータであることが確認できた。 最終年度となる次年度では、さらに調査を進め、本研究期間中に2.5年経過時のデータ収集を終え、5年経過時のデータ収集も追加する予定である。これらの収集データ分析結果から、顎関節症発症に関する寄与因子を検索し予防手段を講じる上での根拠となりうる結果を得られることが期待される。
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