研究概要 |
【目的】 顎関節症発症の寄与因子を探るために、臨床症状、自覚症状の追跡調査を行った。顎関節症症状発症を目的変数、各調査項目を説明変数とするロジスティック回帰分析により統計的に検討した。 【方法】 岩手医科大学歯学部学生341名(男性234名、女性107名、平均年齢20.5±2.2歳)の初年度調査を質問表(顎関節症の有無、既往、生活習慣、健康調査、口腔悪習癖、嗜好等)により行い、内317名の2.5年後調査を終了した。調査対象者の中で臨床所見の検査(欠損状態、咬合状態、歯列不正、開口量測定、側方運動時切歯移動量など)には308名が、心理テスト(CMI, SDS, MAS, Y-G, INV, TEG)には231名が、筋電図および圧痛検査には219名が、そして下顎運動検査には146名が同意の上で参加した。 【結果】 1.初年度に顎関節症状を認めた者は14名、2.5年後に新たに症状を訴えた者は18名であった。 2.目的変数を「顎関節症といわれたことがある」とした場合、「頻繁にくいしばる」でオッズ比4.0(95%信頼区間1.1〜14.7)であった。 3.目的変数を「顎関節痛」とした場合、「顎関節雑音」でオッズ比4.9(95%信頼区間1.8〜13.1)、右側方運動時切歯移動量でオッズ比0.7(95%信頼区間0.64〜0.92)であった。 4.心理テストを説明変数とした場合、有意なオッズ比を示した項目はなかった。 5.2.5年以内に新たに顎関節症の症状を発症したグループは、発症しなかったグループと比較して、以下の特徴が認められた。(1)圧痛閾値測定結果からは非対称性指数が大きかった。(2)筋電図記録からは持続咬みしめ時に高周波数帯域が増加するパターンを示した。(3)下顎運動解析結果からは、側方運動時に切歯点、顆頭点ともに移動量が少なく、習慣性開閉口運動時に顆頭点移動量、前方移動量が有意に大きかった(p<.05;Dunnett)。
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