研究概要 |
平成12年度に引き続き、形状加工と表面処理を同時に行う効率的な生体材料製造法の探索として、リン酸カルシウム塩水溶液を加工液(電解液)としたワイヤ放電加工によるチタン表層へのカルシウム修飾に関する実験を行った。 12年度は加工液にリン酸三カルシウム+クエン酸水溶液を用いたが、Caイオン濃度を高めかつ安定した放電を得るため、13年度では別種の塩を用いた電解液でのワイヤ放電加工を行った。水溶性の塩として第一リン酸カルシウムを用い予備実験を行ったところ、比較的電気伝導度が高い状態でも放電は可能であるが、パルスの無負荷電圧はリン酸三カルシウム+クエン酸水溶液の場合よりも下げた状態でなければ安定した放電が得られなかった。 また、水溶液濃度が高くなるにつれてパルス初期のリークが大きくなり,加工時の放電状態は水溶液濃度が高くなるに従い不安定となり、0.4wt%より高濃度では加工としての安定な放電を維持することが不可能であった。そこで、加工液は水道よりイオン交換樹脂を通過させた脱イオン水をコントロールとし、これに第一リン酸カルシウムを加え水溶液の濃度を0.4wt%から0.025wt%まで変化させ、加工時の放電状態、加工面の表面分析を行った。 各濃度での加工実速度は0.05wt%以下ではコントロールと同等だが、それ以上では放電の不安定化による速度低下が認められた。加工面のSEM観察においてコントロールでは微細な突起が目立つのに対し、水溶液濃度が高い試験片ほど大きく突起の少ない放電痕となり、発生した放電プラズマが短時間で拡散しているものと考えられる。またXPS分析により表層にはCa, Pとも存在するが、深部ではCaもチタンの放電加工層に取り込まれていることおよび取り込まれる量は液中のイオン濃度に依存することが明らかになった。
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