研究課題
本年度は、骨芽細胞への機械的刺激負荷の影響を分子生物学的に検討するため、定量PCR法による各種分化・増殖関連遺伝子mRNAの検出法を確立する研究を行った。研究補助金により蛍光検出器内蔵遺伝子増幅装置を購入した。定量PCR法は試料間における遺伝子発現の差異を解析することから、発現量の絶対値を得るため外部標準遺伝子が必要となる。しかし、現時点では定量PCR法に用いられる外部標準遺伝子は確立していない。そこで今年度は、外部標準遺伝子として目的とする遺伝子を大量生産し、これを用いた定量化を試みた。目的遺伝子としては内部標準としてのPBGD遺伝子とヒトIL-6遺伝子を用いた。ヒトPBGD遺伝子及びヒトIL-6遺伝子は、正常ヒト線維芽細胞が発現するmRNAを逆転写酵素でcDNAにし、それぞれのプライマーで増幅したPCR産物をTAクローニング法によって、ベクターとなるBluescript II SK(+)に組み込んだ。始めに、ベクターをEcoRVで消化し、ベクターの3'末端にdTを付加し、PBGDのPCR産物を組み込み、さらに、SmaIで消化した後、同様にヒトIL-6遺伝子を組み込み、1つのベクターに内部標準遺伝子とIL-6遺伝子を組み込んだ。遺伝子がベクターに正確に組み込まれたか否かについては、ABI PRISM310を用い塩基配列を検索して確認した。当初、骨細胞系細胞として16日齢ニワトリ胚頭頂骨より骨細胞を分離培養する予定であったが、一定の細胞を得ることが困難であったため、市販の骨芽細胞(三光純薬社製)を入手し実験に供した。機械的負荷として、培養細胞伸展装置(既設)を用い周期的一軸伸展刺激を行った。予備的に1時間の機械的刺激負荷を行い、IL-6の発現を検討したが有意差は得られなかったため、次年度は刺激時間の延長を含め種々の培養条件を検討する。