研究概要 |
本研究の目的は,口腔扁平上皮癌(SCC)の発生・浸潤・転移に関与する遺伝子異常を解析し,その結果をSCCの診断に応用し,SCCの治療成績の向上を意図するものである.本研究は,患者の組織の遺伝子を対象とした研究であることから,研究対象となる患者のインフォームド・コンセントを得ることが研究の遂行の前提である.そこで我々は,平成12年4月28日に厚生科学審議会先端医療技術評価部会より提出された「遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針」に基づき,「口腔癌の遺伝子解析におけるインフォームド・コンセント試案」を作成し,その内容の審査のため,我々の共同研究施設である国立仙台病院の倫理委員会に提出しその承認を得るとともに,その内容を第45回日本口腔外科学会総会で公開した.平成12年度においては,当初,ヘテロ接合性の消失(LOH)をゲノム全体を対象としてスクリーニングすることを試みたが,レーザーキャプチャーマイクロダイセクションによるDNAの抽出や全ゲノムを網羅する解析には多大な時間と労力を要し,研究遂行の遅延が重大な問題として浮上してきたため,まずはじめに,これまで報告されている癌抑制遺伝子の遺伝子座におけるLOHやマイクロサテライト不安定性(MSI)をSCC以外の癌についても解析し,SCCの遺伝子異常の特徴を把握することにした.平成12年度においては,SCCの他,卵巣癌,大腸癌,肺癌等のXPA,XPB,XPC,XPD,XPE,XPF,XPG,CSB,p53,FHIT,APC,BRCA1,BRCA2,DCC等のローカスに関して,LOHやMSI解析を行なったが,検討したいずれのタイプの癌においても,上記ローカスのLOHやMSIの様々な発現パターンが認められた.現在,症例数を増やし,これらの遺伝子異常と臨床・病理所見との関連について検討中である.
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