研究概要 |
平成12年度に顔面部の癌性および神経因性疼痛のモデルを作成,手術後21日目から25日までの癌細胞(Lytic tumor cell)注入部への触刺激による低域値刺激に対する反応を観察した。平成13年度は、これらのラットに大槽よりITにループ型マイクロダイアリシスプローベを挿入し、手術後1、3、7、14日の脳脊髄液中glutamate濃度変化の検討を人工脳脊髄液潅流を利用して検討した。ラットは任意に(1)偽手術群:開創術のみ。(2)非治療群:生理食塩水を持続静注に分け、透析液中のglutamate濃度をOPA誘導体化して、HPLC-ECD法で定量的に測定した。 その結果、癌性および神経因性疼痛のラットの低域値刺激に対する反応では神経因性疼痛ラットでは術後5日目頃から疼痛が出現し、癌性疼痛ラットでは術後20日目頃に出現することが明かとなった。脳脊髄液中glutamate濃度変化の検討では神経因性疼痛ラットで7日目頃に髄液中glutamate濃度が著明に上昇することが明かとなった。 平成14年度は分子生物学的(病理学的)検討として、癌性および神経因性疼痛ラットの術後21,22,23,24日後および1、3、7、14日目に三叉神経脊髄路核の組織切片を作成してprogrammed cell deathに関係すると考えられるc-fos遺伝子発現をin situ hybridization法にて検討し、また異なる組織切片でDNA断片化に対するTUNEL染色を検討して、術後20日目頃にDNA断片化が起こり、この遺伝子発現とapoptosisは神経栄養因子、サイトカイン、ラジカルなどとの相互作用を有することが明かとなった。次に、特定細胞の傷害部位では、グリア増殖とシナプス関連蛋白が増加し、シナプス再生の可能性が予測された、また、神経栄養因子はapoptosisを抑制し、シナプス再構築を増強し、慢性疼痛を軽減する可能性が示唆された。 以上のことから、癌性および神経因性疼痛によるprogrammed cell deathとそれに先行する遺伝子発現、傷害部位のシナプス再生能が明らかとなり、疼痛治療の治療法の方向性が示された。
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