研究概要 |
ラットの全脳を氷冷下にホモジナイズし、sucroseと4種類のタンパク分解酵素阻害剤を加えて、遠心分離(700g×10min,27,000g×40min,120.000g×50min)を繰り返して、Naチャネルを含む神経細胞膜分画を分離精製し、Synaptosome分画とした。このSynaptosome分画に可溶化剤Nonidet p-40と卵黄ホスファジールコリンを加えて、さらに遠心分離(100,000g×90min)し、得られた上清を可溶化Naイオンチャネル分画とした。また、必要に応じてWGA affinity columnやショ糖勾配法を用いて、さらに精製した。このようにして得られたsynaptosome分画と可溶化Naイオンチャネル分画について^<14>C-lidocaineとNaチャネルオープナーである^3H-batrachotoxininとの結合力をゲルクロマトグラフィー(Sephadex G-50)を用いて検索した。この結果、ゲルクロマトグラフィー(Sephadex G-50)で分画したタンパクと^<14>C-lidocaineとは結合が認められなかった。すなわち、可溶化Naイオンチャネル分画と局所麻酔薬とは結合しなかった。次に、限界濾過法(分子量50,000以上cut,0.65μm以上cut)を用いて、synaptosome分画と可溶化Naイオンチャネル分画とから、神経細胞膜を抽出し、^<14>C-lidocaineとの結合力を測定した。この結果、^<14>C-lidocaineは神経細胞膜と親和性を示すことが分かった。また、^<14>C-lidocaineは人工細胞膜(リン脂質膜)とも強い親和性を示した。以上のことから、局所麻酔薬はNaイオンチャネルと直接結合して、局所麻酔作用を現わすのではなく、神経細胞膜と結合してその作用を発現する可能性が高いといえよう。この結果は、従来から我々がNMRやリン脂質二重膜を用いた研究結果と一致するものであり、局所麻酔薬は神経細胞膜と結合することで、神経細胞膜の流動性や、Naチャネルタンパクのcomfbrmation changeを引き起こして局所麻酔作用を現わす可能性が高いことを示唆している。
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