研究概要 |
本研究は,頭頸部癌におけるシクロオキシゲナーゼ(COX)-2発現を免疫組織化学的ならびに分子生物学的に検索し,COX-2阻害剤による腫瘍増殖抑制効果および細胞増殖抑制機序を明らかにすることを目的としている.初年度である平成12年度に得られた成果を以下に述べる. 1.抗ヒトCOX-2家兎血清(IBL,群馬)を用いたSABC法により,頭頸部扁平上皮癌および唾液腺癌におけるCOX-2発現を免疫組織化学的に調べた.その結果,いずれの癌にもCOX-2発現を認めたが,唾液腺癌で高発現する割合が高かった.扁平上皮癌では,分化度の低いものほど発現が高く,未分化癌では全てに高発現がみられた. 2.扁平上皮癌培養細胞(KB,SCCKN)および唾液腺癌培養細胞(HSG,HSY)について,免疫細胞化学染色を行ったところ,HSGはHSYより,KBはSCCKNより高いCOX-2発現を示した. 3.COX-1とCOX-2阻害剤であるスリンダクおよびCOX-2の特異的阻害剤であるエトドラクは濃度依存的に細胞増殖を抑制したが,エトドラクはスリンダクより有効であった.また,COX-2高発現のKBとHSGは,低発現のSCCKNとHSYより高感受性であった. 4.COX-2高発現のHSGと低発現のSCCKNについて,PGE_2合成におけるCOX-2阻害剤の影響を調べたところ,HSGのPGE_2合成はエトドラクにより著明に抑えられたが,スリンダクでは軽微であった.SCCKNではいずれの阻害剤ともPGE_2合成を抑えなかった. 5.COX-2阻害剤による細胞増殖抑制にアポトーシスが関与しているか調べた結果,エトドラクはスリンダクより強いDNA断裂を引き起こし,またHSGはSCCKNより高いアポトーシス指数を示した.
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