研究概要 |
本研究は,頭頸部癌におけるシクロオキシゲナーゼ(COX)-2発現を免疫組織化学的ならびに分子生物学的に検索し,腫瘍増殖および悪性度におけるCOX-2の関与とCOX-2阻害剤による腫瘍増殖抑制効果を明らかにすることを目的としている.平成14年度に得られた成果を以下に述べる. 1.口腔扁平上皮癌の原発巣と転移巣におけるCOX-2蛋白発現を比較した場合,転移巣において有意に発現増加がみられた.また,原発巣,転移巣いずれにおいても,腫瘍の分化度の低下に伴い,COX-2発現は増強する傾向を示した. 2.頭頸部扁平上皮癌細胞であるKB,SCC25,唾液腺癌細胞であるHSG,HSYに,COX-1およびCOX-2阻害剤であるスリンダク,選択的COX-2阻害剤であるセレコキシブを作用させると,細胞増殖は濃度依存性に抑制されたが,SCC25とHSGでより著明であった.また,セレコキシブのIC_<50>はスリンダクの1/10であった. 3.SCC25細胞は多量のPGE_2を産生していたが,KB,HSG,HSYではわずかであった.SCC25,HSGにPGE_2を作用させると,SCC25では増殖が促進されたが,HSGでは促進されなかった.また、セレコキシブにより,PGE_2産生とCOX-2蛋白発現は効率よく抑制された. 4.セレコキシブとスリンダク処理により,アポトーシスの指標であるDNA断片化やDNAラダー形成が誘導されたが,セレコキシブでより著明であった. 5.細胞毒性のないあるいは軽度毒性のある濃度のセレコキシブと抗癌剤を併用してSCC25,HSGを処理した場合,アドリアマイシン,ビンクリスチン,ブレオマイシンにおいて2〜10倍の効果増強がみられた.この増強効果は,アポトーシス誘導の程度とおおむね一致していた. 以上の結果より,COX-2が口腔扁平上皮癌の転移に関与すること,選択的COX-2阻害剤により腫瘍細胞増殖,PGE_2産生,COX-2蛋白発現が効率よく抑制されること,抗癌剤との併用によりアポトーシスを介して殺細胞効果が増強されることが示された.
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