研究課題/領域番号 |
12470468
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
渡辺 久 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教授 (40143606)
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研究分担者 |
荒川 真一 東京医科歯科大学, 歯学部・附属病院, 助手 (20302888)
野口 和行 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (90218298)
萩原 さつき 東京医科歯科大学, 歯学部・附属病院, 講師 (70134715)
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キーワード | 遺伝子診断 / 低フォスファターゼ症 / 歯周疾患 / 臓器非特異型アルカリフォスファターゼ / 点突然変異 |
研究概要 |
低フォスファターゼ症は常染色体劣性遺伝疾患で臓器非特異型アルカリフォスファターゼ(TNSALP)遺伝子の構造異常に起因することが知られている。ヒトのTNSALP遺伝子は第1染色体の短腕にあり、12のエクソンと11のイントロンからなっている。低フォスファターゼ症は、血清、組織中のALP活性が低値を示し、くる病、骨軟化症様骨障害、乳歯の早期脱落などを特徴とし、ALP活性と硬組織形成との密接な関連を示唆するものである。今回、成人型低フォスファターゼ症と重度歯周炎を併発している症例について遺伝子診断を行った。発端者は52歳女性で、ALP活性の低下と尿中のフォスフォエタノールアミンの増加が顕著であり、全顎的に歯槽骨の吸収が著明であった。発端者、その家族、およびコントロールとして全く無関係な健常人について遺伝子診断を行った。 被験者の末梢血白血球からDNAを抽出した。TNSALP遺伝子の既知のシークエンスデータから、TNSALP遺伝子のエクソンに対する11対のプライマーを作製し、PCR法により、被験者のDNAを増幅した。増幅したDNAをPCR-SSCP分析とPCR-ASO法を行った。 その結果、発端者において、TNSALP遺伝子のエクソン5に異常なバンドを認めた。この異常なバンドは母方の叔母にも認められたが、発端者の父親、兄妹、健常者には認められなかった。この異常なバンドはシークエンス分析の結果、TNSALP遺伝子のエクソン5の571番目の塩基がC(シトシン)からT(チミン)に置換していた。この点突然変異により、成熟したTNSALPのポリベブチドは本来なら、115番目のアミノ酸はV(バリン)であるべきなのがAla(アラニン)に置き換わる結果となった。この異常は母方から遺伝したものと考えられる。 今回、発見された点変異(C571T)はいままでに報告のない新しいTNSALP遺伝子の点変異であり、これにより正常なTNSALPが産生されず、機能にも異常をきたし、成人型低フォスファターゼ症と重度歯周炎を併発したものと思われる。
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