研究概要 |
歯周病局所には同病巣歯肉中にTh1およびTh2タイプのヘルパーT細胞が集積され、細胞性ならびに体液性免疫応答が活発に誘導されている。これらの歯周病原性細菌に対する特異的な免疫応答の開始に際して、歯肉中のLangerhans cell あるいはinterstinal dendritic cellなどの樹状細胞(DC)が、同細菌由来抗原を獲得してナイーブあるいはメモリーT細胞に抗原提示することにより重要な役割を果たしている。本年度には、P.gingiualis(Pg)に対する歯周病巣局所での免疫応答調節機構を明らかにするために、同菌由来の菌体成文である線毛およびLPSのDCにおける認識機構をEscherichia coli(Ec)LPSと検討した。その結果、1)CDla,HLA-DR,CD80,CD54,CD40は全ての刺激において誘導され、Ec LPSで最も大きかった。CD14は末刺激DCでは発現しないが、PgLPS及び線毛刺激の場合にのみ再び発現が誘導された。2)IL-8,IL-12,RANTESは、Ec LPS,Pg LPS,線毛全ての刺激により有意な産生がみられたが、Ec LPSと比べてPg LPS,線毛はより高濃度(1μg/ml)が必要であった。3)Ec LPS,Pg LPSともに、LBP及びsCD14濃度依存的にIL-8産生量の増加がみられたが、Pg線毛はsCD14のみに依存してIL-8産生がみられた。4)無刺激DCはLI-8,TLE2,4,6,TollipのmRNAを発現していた。Pg線毛刺激によりIL-8mRNAの増加がみられたが、他は有意な変化はみられなかった。以上の結果からDCはEc LPSの場合と同じくLBP及びsCD14依存性にPg LPSを認識するが、Pg線毛については既に報告されている歯肉上皮細胞と同じくsCD14がその認識に関与するものと考えられた。またPg菌体成文はEc LPSの場合とは異なったDC活性化をもたらし、刺激後にDCの強いmaturationを誘導しない可能性が示唆された。
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